2016年1月~6月までの黄熱流行件数354件(アメリカ疾病予防管理センターより)
黄熱(おうねつ、yellow fever)または黄熱病は、フラビウイルス科フラビウイルス属に属する黄熱ウイルス (yellow fever virus) によって引き起こされる病気。 発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから命名された。熱帯アフリカと中南米の風土病で、黒色嘔吐を起こすことから通称を「黒吐病」という。 野口英世が研究を手がけたが、その中途で感染し死亡した。日本では感染症法における4類感染症として指定されている。
黄熱は、ジカ熱、デング熱及びチクングニア熱と同様にネッタイシマカなどの蚊を介して感染する。日常生活におけるヒトからヒトへの直接感染はない。
潜伏期間は3 - 6日で、突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、悪心・嘔吐で発症する。 主な症状は発熱、寒気、頭痛、筋肉痛、吐き気など。 発症後3 - 4日で症状が軽快し、そのまま回復することもある。しかし、重症例では、数時 間から2日後に再燃し、発熱、腎障害、鼻や歯根からの出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血 、黄疸などがみられる。死亡率は30 - 50%と致死率は高い。
特別な治療法はなく、症状を軽くするための対症療法が行われる。早期治療で体力を保つことが重要。
※インコグニート天然虫よけスプレーは、全ての種類の蚊だけではなく、ダニ・ノミ・サシバエ等の吸血虫にも有効です。
黄熱は、ジカウイルス感染症やデング熱、日本脳炎などの感染症の原因となるウイルスと近縁の黄熱ウイルスに感染することにより起こる蚊によって媒介される感染症です。 感 染すると、発熱、寒気などの症状を呈することがあり、更に一部の患者で重症化し、適切な治療を行わないと死に至る場合があります。有効なワクチンが開発されており、予防が可能です。
黄熱ウイルスを持った蚊がヒトを吸血することで感染します(蚊媒介性)。基本的に、感染したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありません。また、感染しても 全員が発症するわけではなく、症状がないか、軽い症状のみで軽快する場合が大半です。
アフリカ、中南米で発生があります。リスク地域の熱帯雨林では、蚊と霊長類の間で常時感染がみられており、偶発的にヒトに感染する場合(森林型サイクル)や、デング熱の ように都市部でヒトと蚊の間での感染が起こる場合(都市型サイクル)、サバンナのような地域で、霊長類とヒトと蚊の間で感染がみられる場合(中間型サイクル:アフリカのみ )があります。都市型サイクルでは大規模なアウトブレイクを起こす場合があり、現在ではアフリカの一部の地域でみられることがあります。2015年12月以降、アフリカ中部のア ンゴラで大規模な都市型サイクルのアウトブレイクが発生し、隣国のコンゴ民主共和国にも拡大しています。
第二次世界大戦終戦以後の海外のリスク国・地域で感染し発症した例、日本国内で感染した例ともにこれまで報告はありません。アメリカ合衆国とヨーロッパにおいては、これ までもリスク国・地域に渡航後に発症した例が1970年~2013年の間で10例みられ、2015年12月以降のアンゴラを中心とした流行では、中国などでは、ワクチンを接種せず流行地域に渡航し、発症した例が報告されています。
日本には常在しないヤブカ属のネッタイシマカが、黄熱ウイルスを媒介することが確認されています。日本の秋田県および岩手県以南に常在するヒトスジシマカについては、黄 熱ウイルスを媒介することができるか否かは分かっていません。
黄熱ウイルスに対する有効な薬は見つかっておらず対症療法が中心です。有効なワクチンがあり予防することができます。
黄熱は、感染しても症状がないか、軽い症状のみで終わってしまう場合もあります。症状を呈した患者のうち15%が重症になり、 黄疸、出血傾向を来たし、重症になった患者のうち20-50%の患者が死亡すると言われており、発症した場合には、重症になるリスクの高い感染症です。
黄熱については、これまでのところ、ジカウイルス感染症のような胎児の先天性障害の関係は指摘されていません。
海外の黄熱リスク国・地域に渡航する際は、黄熱リスク国・地域へ入国する10日前までに黄熱の予防接種を打ちましょう。国によっては、入国に際し、黄熱の予防接種証明書 (イエローカード)の提示を求められる場合があります(予防接種証明書は、接種後10日目以降から有効となります)。また、黄熱リスク国・地域では、その他の蚊媒介感染症 (デング熱など)の流行もみられることから、渡航先では蚊に刺されないように注意しましょう。このため、長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また、蚊の忌避剤(虫よけス プレー)なども利用しましょう。
黄熱リスク国及び黄熱予防接種証明書(イエローカード)の要求国については、FORTH(厚生労働省検疫所ホームページ)を確認してください。
黄熱ワクチンは、黄熱ウイルスの病原性を極めて弱くして作成された生ワクチン(生きたウイルスを含むワクチン)であり、接種10日後には90%の接種者で十分な免疫が得られ、 接種後14日後にはほぼ100%の予防効果があるとされています。免疫効果はほぼ一生持続すると考えられています。
検疫所や一部の機関で接種が可能です。黄熱の予防接種証明書は接種後10日目以降から有効となるため、予防接種証明書の提示を求める国では、渡航の直前に接種を行っても 入国が認められない場合があります。黄熱予防接種機関では、計画的に接種を実施しており、事前の予約が必要です。黄熱リスク国・地域への渡航を計画している人は、渡航先に より、黄熱以外の予防接種やマラリア予防薬の処方を受けた方がよい場合もあります。早めに黄熱を含めた予防接種の接種スケジュールを立て、黄熱予防接種を受けるようにしま しょう。 なお、黄熱以外の予防接種については、接種する医療機関の医師と相談してください。
次のいずれかに該当する場合は、黄熱ワクチンを接種できません。
国内では、「ディー ト」や「イカリジン」を成分とした忌避剤が市販されています。アフリカや中南米の蚊にも効果があります。製品の用法・用量や使用上の注意を守って使 用しましょう。製品の忌避効果は、蒸発、雨、発汗などにより持続性が低下するので、一定の効果を得るためには、定期的に再塗布することが必要です。
すべての蚊が黄熱ウイルスを保有している訳ではないので、蚊に刺されたことだけで過 分に心配する必要はありません。 心配な場合は、帰国された際に、空港等の検疫所にご相談ください。また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄りの保健所等にご相談くだ さい。なお、発熱などの症状がある場合には、海外に滞在したこと、蚊に刺されたことなどを告げて、医療機関を受診してください。
日本には黄熱ウイルスの媒介蚊であるネッタイシマカは常在していません。デング熱などを媒介するヒトスジシマカは秋田県および岩手県以南のほとんどの地域に生息していま すが、ヒトスジシマカが黄熱ウイルスをヒトに感染させる能力はネッタイシマカと比較すると低いと言われています。また、これまで、リスク国・地域で感染して黄熱を発症した 人が報告されている米国や欧州、中国では、感染者を発端とした国内での感染例は報告されていません。こうしたことから、国内でヒトと蚊の間で感染が起こる可能性は低いと考えられます。
フラビウイルス科フラビウイルス属に属する黄熱ウイルスです。
3 ~6日と言われています。
主として発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、背部痛、悪心・嘔吐などで発症します。約15%の発症者で数時間から1日程度の症状の寛解期に引き続き、高熱の再燃と、黄疸や出血傾向 が進行し、ショックや多臓器不全に至る場合があります。重症化した場合、20-50%の致死率があります。
検査は、血液からのウイルス分離または PCR 法による病原体遺伝子の検出により行い ます。血清学的検査による診断は、IgM抗体または中和試験による抗体の検出により行います。検査を希望される場合は、お近くの保健所にご相談ください。
同じ蚊媒介感染症であるデング熱、チクングニア熱、マラリア、同様に肝機能障害や黄疸を来すことのあるレプトスピラ症、A型肝炎、E型肝炎、腸チフスなどとの鑑別が必要です。
対症療法となります。重症化すると肝機能障害、腎機能障害が進行し、集中治療を要す る場合があります。 出血のリスクを助長するため、非ステロイド系消炎鎮痛薬やアスピリンの使用は避けた方が良いとされています。
感染症法の四類感染症に指定されており、医師による保健所への届出義務があります。
現在、ネッタイシマカは国内には生息していません。かつては国内でも沖縄や小笠原諸島に生息し、熊本県牛深町には 1944 ~ 1947 年に一時的に生息していたことが記録され ていますが、 1955 年以降は国内から消滅したとされています。ただ今日では、航空機によって国内に運ばれる例も確認されており、定着の可能性は皆無ではありません。
ネッタイシマカの分布の北限は台湾の高雄市周辺とされています。従って、国内では沖縄県の南方(石垣島・西表島など)以北の野外では定着できないと考えられます。しかし 、空港ターミナルなど、一定の温度が維持されているような特別な場所では定着できるかもしれません。
第二次世界大戦終戦以後、リスク国から帰国後の方を含め日本での黄熱患者の報告はありません。デング熱などを媒介するヒトスジシマカは秋田県および岩手県以南のほとんど の地域に生息していますが、ヒトスジシマカが黄熱ウイルスをどの程度媒介するかについては現状では科学的な知見は限られていますが、ネッタイシマカと比較すると黄熱ウイル スをヒトにうつす確率は小さいと考えられています。黄熱リスク国・地域でウイルスに感染した発症期の人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊が 一定期間の後に感染性が発現し、他者を吸血した場合に、感染する可能性はありますが、低いと考えられます。
ネッタイシマカは屋内で活動するため、屋内での服装や対策にも留意しなければなりません。ヒトスジシマカは、早朝・日中・夕方(特に日没前後)に活動し、ヤブや木陰など でよく刺されます。その時間帯に屋外で活動する場合は、長袖・長ズボンの着用に留意し、忌避剤の使用も推奨されます。